経営品質協議会
(公財)日本生産性本部
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西精工株式会社は「ものづくりを通じて、みんなが物心共に豊かになり、人々の幸福・社会の発展に貢献する」という経営理念のもと、「人づくりを起点に徳島から世界へファインパーツ(以降FP)の極みを発信する」という経営ビジョンを実現するために、徳島県に根を張り、国内、国外にビジネスを展開している。冷間鍛造技術と提案活動を核とし、「お役立ち」という顧客価値を提供するために、現状とのギャップを認識し戦略的に活動している。朝礼における対話を活用し、創業の精神や経営ビジョンといった価値観や方向性を共有することで、社員の協働と自主性に対する意識が高まり、他部門との協力関係が自律的な相互連携にまで至っている。そして、部課長・経営会議でのMR(マネジメントレビュー)や半期に1度の係別面接など、振り返りのための仕組みや場づくりを数多く実施することで、より高い価値を創るための学習に目が向けられ始めている。
同社が属する「めねじ」業界は、海外企業との価格競争、主要ユーザーの生産減など、厳しい環境にある。そのなかで、新たな価値の創造、顧客ニーズ変化への対応、人材の確保・育成による健全な事業成長の実現は、国内の製造業全体に共通する経営課題であり、同社の取組は多くの点でベンチマーキングの対象になり得る。 |
【FPの創造に向け、社員同士の思考と対話を重視した組織づくり】
FPを創造するには、社員がFPを理解し、FP創造に向けたアイディア出しや改善が絶えず行われるような組織づくりが不可欠で、経営ビジョンや創業の精神に関する話し合いの場を意図的につくるなど、社員同士の思考と対話を重視している。「フィロソフィー」に書かれたテーマを全員で話し合う「フィロソフィー朝礼」を、毎日全係が50分以上行っており、進め方も各係で独自に工夫している。また、「ビジョン創生委員会」では若手社員を中心に編成された委員会メンバーが定期的に集まり、対話を重ねて中期ビジョンを策定する。このようにフィロソフィーや経営ビジョンを思考の中心に据えて考え、対話の活性化が図られることが、FP創造のための組織づくりに効果を発揮していることが認められる 。
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【FPを着実に創造し続ける独自技術力の発揮】
FPの定義である「高品質、高精度、極小」を実現させるために、FPを創造する工程で必要な製造設備や金型を、メーカーから取り寄せるのではなく、自社で開発する技術力を備えている。自社で製造設備を開発することで、微妙な調整が可能となり、顧客が持つ、より特殊な要望に対応することを実現する。また、機械を大切に扱うという価値観が定着し、機械設備のオーバーホールも自社で行っている。このことで、機械や設備に関する知識と技術力が更に高まり、新たな設備開発に活かすといった好循環が保たれている。人材面では、「人に教える」、「まわりから尊敬される」ということがマイスターのあるべき姿と定義し、人間力という分野を加味したマイスター制度を運用している。この制度は同業他社にはない独自性のある取り組みといえる 。
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【「お役立ち」という顧客価値を起点とした業務プロセスの革新】
FPを通して「お役立ち」という顧客価値を提供するという考え方が組織内に浸透し、顧客満足度調査チームによる対面でのお客様満足の把握、営業技術者を中心としたVA/VE提案活動など、顧客との対話を増やす取り組みを強化したことで、安定したユーザー同行率や提案率を維持している。その結果、成約率も同業他社より高く、増加傾向にある。また、出張報告書やカスタマイズ表を活用して顧客情報をまとめ、グループウエアで一元管理し、必要に応じて社員が情報を引き出している。更に、新製品に関する情報をレビューし、気になったことをコメントとして書き込むなど、全員が顧客の声に耳を傾けることができる仕組みを構築していることも、革新性が高い 。
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【MRや係別面接を活用した学習する組織の実現】
FP創造のために組織において振り返りの仕組みが定着している。具体的に、月次の目標達成度、目標達成に向けた戦略の有効性確認や、財務上の結果は、月に1度の部課長・経営会議のMR内容が即座に議事録に落とし込まれ、翌朝礼で係長から全社員に咀嚼して報告され、それをもとに各係で振り返りが行われる。また、係別面接では、半年ごとに活動成果をアピールするために、係内で活動の振り返りを行う。そしてアピールした内容に対して、経営者からフィードバックを受ける仕組みになっている。このように振り返りとフィードバックを継続的に行うことで、係の取り組みは更に工夫され進化している。更に、係別面接により、浮き彫りとなった課題を解決するために、高得点をとった係への自主的なベンチマーキングが行われていることから、社内での自律的な相互連携が図られている 。
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●設立 |
1923年4月
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●代表者 |
代表取締役社長 西 泰宏 |
●本社所在地 |
徳島市南矢三町1丁目11-4 |
●売上高 |
4,862百万円(2012年7月末) |
●従業員数 |
239名 (再雇用、臨時社員 含む 2013年10月現在) |
西精工株式会社は、1923年創業者の西卯次八が、徳島市で当社の前身である「西製作所」を創業、切削加工でボルトを製造し大阪の流通問屋に販売したことに始まります。終戦を境に、プレス加工による欧米輸出用ナット製造に転換、1960年、「西精工株式会社」へ改組を機に、ベアリング事業へも参入、国内の弱電・家電業界の復興には、高品質な小径の四角、六角ナットを量産してきました。
また、日本のモータリーゼーションの発展には、鍛造加工による自動車用溶接ナットの草分け企業として、大量製造・安定供給を行い、国内めねじ業界において小径六角ナット製造第1位、溶接ナット製造第2位のメーカーに成長することができました。ところが、2000年頃からユーザーのアジア諸国への生産移転が進み、2004年、創業以来44年間お世話になったベアリング事業から撤退、既存製品も価格見直しによる商権維持が続き、組織は新たな方向を模索していました。そこで、2006年、「経営理念」により存在価値を示し、2009年、「経営ビジョン」で目指す姿を明らかにしました。すでに主要ユーザーである自動車産業では、「あこがれの高級品」から「安全・環境・共生」という新しい価値に向かっており、当社も自動車と自然や社会の関係構築に貢献していきたいと、役割を大量製造・安定供給から高精度・高機能・極小のファインパーツによる価値創造へと見直してきました。
今後も、長年の技術・ノウハウの蓄積から、ファインパーツでお客様に貢献できるメーカーへと進化し続けていきます。
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当社の経営理念、「ものづくりを通じて、みんなが物心共に豊かになり、人々の幸福・社会の発展に貢献すること」を実現していくには、「ものづくり」に関わるマネジメントツールだけでなく、お客様に貢献することが喜びと感じられる社員で、「お役立ちの精神」を高めることだと考えていました。
それには、「人づくり」を中心に据えた組織風土の改革しかないと考え、様々な社員教育の機会を設けてきました。先ず、全社員がミッションステートメントを作成しながら、なりたい自分を明らかにし、人間力を向上させる勉強会や、専門研修による技能取得などで、自己研鑽を積んだ社員自らが、渦の中心となり経営理念の実現に向けた取り組みを実践しています。また、当社では、「社員に優しい職場づくり」のために、係長以上が1年間かけて、ES調査の結果を分析し、環境改善・風土改革を行っています。誰でもが手の届く社員表彰、子育て両立支援への取り組み、リフレッシュ休暇など、多くの仲間と一緒に仕事ができることが楽しいと思える社員によって、顧客満足を高める取り組みが創造されたことで、くるみんマーク認証取得、徳島県経営品質賞知事賞、第3回日本でいちばん大切にしたい会社大賞中小企業庁長官賞、障害者雇用優良事業所表彰などで評価されてきました。
今後も、お客様・地域に貢献することが喜びと感じられる「社員と組織」づくりにこだわり続けていきます。
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